なかなかやるじゃないか。
決意はできたようだな。
 
・・・さて。
いま話しているこの「拙者」は60年前、昭和35年(1960年)にいる「拙者」だ。
 
当時の日本は高度経済成長の時代に突入しつつあった。
社会が急速に豊かになっていくと同時に様々な歪みが静かに進行していた時期だ。
この頃から、この国の人間は都市開発と経済成長に浮かれ、自然をないがしろにしはじめた。
自然の恵みとお天道様あっての人間社会だというのに、勘違いも甚だしい・・・。
 
しかし、それが歴史の継ぎ目として避けられない段階だったのだろう。
 

 
拙者は、この時代で微力ながら果たすべきことを果たし、これから別の時代へと時空を超えて移動する。
次に向かう「別の時代」、それこそ、おぬしらの時代だ。
 
そこで、一つ頼みがある。
時間を飛び超えるとき、「拙者」は記憶を失ってしまう。
拙者と、別の時代に現れる「拙者」は同じだが、同じではない・・・。
 
頼む、もしおぬしらの時代に「拙者」が現れたなら、その記憶を取り戻す手助けをしてやってほしい。
「拙者」がその時代でなすべきことを思い出す手助けをしてほしい。
きっと、その「拙者」も、それを願っているはずだ・・・。
 
 

 
おっと・・・そろそろ時間だ。
いつまでも時間を超えて会話を続けるわけにはいかぬ・・・時空の歪みがひどくなってしまうからな。
昭和30年の「拙者」からおぬしらに話しかけるのはこれで終わりとしよう。
 
ここから先は、おぬしらの時代にいる「拙者 」を探して進むのだ。
お前たちの近くには、「拙者」が残した手がかりがあるはずだ。
 
「自然と文化には裏がある」
 
物事の表面ばかり見ておっても、先に進めぬぞ。
 
・・・それでは、健闘を祈る!
 
 
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