ちょっと!
もう・・・遅かったじゃない。
(す、すみません)
おお、みどり。
待たせたな。
周辺の聞き込みはどうだったかな?
これまで分かったことを教えてくれ。
ええと・・・ちょっと待って。
結構大変だったんだから。
まず、このあたりの集落では、数百年前から何度も乙次郎がやって来た形跡があるわ。
文書の記録は見つからなかったけれど、この辺りの古い家々に、はっきりとした言い伝えとして残っているの。
不思議なことに、いつも乙次郎は、最初に会った村人に「私の名を知っているか?」と尋ねるらしいわ。
村人たちはいつも突然現れる乙次郎の言い伝えを知っているから、必ず「ようこそ戻っていらっしゃいました、乙次郎さん」と答えることになっている・・・。
やはり、乙次郎は時間を飛び越えて新しい時代にやってくる度に、自分の名前まで記憶を無くしてしまうらしいわね。
しかし、名前を村人に聞いて思い出してからは、集落の中を歩き回るうちにどんどん記憶を取り戻していくのね。
(乙次郎は、どんな時に現れるんですか?)
良い質問ね。
私もそれが気になって、調べたんだけど・・・。
村人たちから聞いた断片的な言い伝えを総合すると、どうやら 大きな歴史の転換点となるような時期に、現れているみたい。
幕末、明治期、大正の終わり、そして前回が・・・これから日本が高度成長に突入していく、1960年よ。
そして、今、また乙次郎が現れたということは、つまり・・・
今がまさに、大きな時代の転換点にさしかかっているということかもしれんな。
そうね。
しばらくたってから振り返れば、あの時が時代の大きな変わり目だったと後になって気づくのかもしれないわね。
・・・でも、それまで待ってはいられないわ。
せっかく今、すぐ近くに乙次郎がいるんだから、追いかけましょう!
そして、彼が何度も口にしている「使命」とやらがなんなのか、突き止めるのよ!
よし、こうしてはおれん。
みどり、謎レーダーに反応はないか?
(な・・・謎レーダー?)
これよ。
近くに仕掛けられている「謎」が発する微かな空間の歪みを感知するの。
(マンガみたいだ・・・)
どうやら、この方向に道なりに進んだバス停の近くに、謎反応があるようね。
行きましょう。
やはり乙次郎は、ただものではないわ。
次へ