おお・・・なんてことだ。
わしの城山にあんなに木が生えて・・・あれでは見通しが利かぬではないか!?
わしの時代には城の周囲の木は全て切り払い、どんな屈強な敵の兵が登って来ようとも上からは丸見えで、上から石を落とせば「一石十兵」、鉄壁の守りを誇っていたというのに・・・
む?
いま、「わしの城山」と言ったな?
声の主はもしや・・・あの檜原城の城主だというのか?!
すごいじゃが!
僕も一度、城主様に会ってみたかったじゃが!
(まじか・・・声の主は殿様?!)
代々檜原城主をつとめたのは平山氏という一族じゃがけど・・・声の主さんは何度も「敵の軍勢が攻めてくる」と言ってたじゃがな?
歴史上、実際に檜原城が敵に攻め込まれたのは一度だけじゃが。
武田を滅ぼした豊臣方の軍勢は、その後間もなく小田原の北条氏も攻めて、その重要な拠点だった八王子城を落城させたのが天正18年(今から430年ほど前)の6月23日。そして豊臣の軍勢はそのままの勢いで秋川の下流側から檜原村に攻めてきて・・・その時の檜原城主は、平山氏重(うじしげ)だったはずじゃが!
お前たち、見た目は怪しいが、どうやらやる気はあるようだな。
特にお前、イモのくせに詳しいではないか。
いかにも、わしは檜原城主、平山氏重じゃ。
(ほんとに殿様だ・・・!)
わしの居館はあの城山のふもとにある。
あるはずだ。
いや、あったはずだ・・・。
ええい、お前たちにかまっている時間はない、居館に戻らねば!
怪しいものどもめ、お前たちが本当にワシの役に立ちたいというのなら・・・ついてくるが良い!
ただし、のんびり待っている暇はないぞ。